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伊藤実: 経営改革 2010/03/25 木曜日

 政府の経済政策は内向きになっている、といわれるが日本企業も同じ。しかし外国の企業は違う。2009年7-9月期では、韓国のサムスンは営業利益が3200億円で、一方日本大手電気企業9社を合わせても1500億円くらいしかない。

 その原因にはいろんな面があるが、一つには日本企業は「いいものは売れる」と信じ込んでいること。優れた技術だからといって売れるとは限らない。日本の携帯電話は機能は優れているが、世界では通用しない。機械・商品の単体で売ろうとしており、システムで考えていない。マーケティングのやり方が間違っているともいえる。

 日本はデジタル化を甘く見ている。モジュール化が進んでいて必要な部品・基板は市場から買ってくることが出来る。それを組み合わせれば安く出来る。日本は一社で研究開発から生産まで全部やろうとする。コストが掛かる。また儲からなくなった日本企業はリストラする。すると人材が他国の企業に流失する。

 日本は強いところを伸ばしていくべき。選択と集中を進めたところは伸びている。日本の強みはデジタルとアナログが一緒になっているような領域。それとグローバル化を進めるべき。企業の人に聞くと若者は海外に行きたくないという。また、国際的な企業連携を強めること。技術力はまだあるから今のうちに改革することが出来る。

 〈今回で最後の出演ということで〉テレビ、ラジオ出演にしているが、テレビだと話したことを忘れられる。ラジオだとちゃんと覚えてくれている。

労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる)


編者コメント
感想 [なるほど]

 50代後半以降の人は「いいものを作れば売れる」という掛け声のもとに生産し輸出することによって働いてきた。その思いがたまたま外的経済条件と整合して日本の経済を大きくしてきたことは疑いのないところだろう。複雑であろうとなかろうと「技術」は水平的に移行する。基本的に誰でもどこでも出来ることが「技術」や「工学」・「工業」だ 。日本人にしか出来ない技術というのはありえない。氏はアナログの技術はそう簡単には海外に流失しないといっているが、条件によればそうでもないだろう。経済的にペイしないからやらないのだろうと思う。その切り口から「技術」を眺めてみると日本の強みはあると思う。

 若い人が海外に出たがらないという話は興味深かった。昔は海外の経験をつんだ人が事業部の責任者になって世界に打って出るのが一般的だったが、今の日本企業にはそんな余力もなくて若い社員に手本をみせる中堅社員もいないということか。企業自身も弱ってきているのだろうか。

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伊藤実 再就職に向けた行動計画 2009/07/16

 昨年末までは雇用情勢はそこそこ調子がよかったが、リーマン・ショックであっという間に世界が不況に巻き込まれた。その後に派遣労働者の雇用停止・解雇が起こった。雇用の更新がなされなければ自動的に(何の救済措置も無く)失業する。正社員は非正規社員の解雇により守られていた。また、正社員は制度的にも雇用調整助成金などによっても守られていた。そのうちに景気が回復してくれたらいいのだが・・・。
 ハイブリッド車は売れているが年間せいぜい40万台くらい。他の車種は売れてないので正社員もいずれ解雇されるだろう。中小企業の経営者に聞いてみると仕事が減ったのではなくて、無いんだという。
 失業したときに職安に通って、いい仕事がないないと嘆くのは悪いパターン。求人が求職を上回っているのは専門技術職。あまっているのは誰でも出来る一般事務。
 大都会では民間の職業紹介所があり、そこでは求人する会社がお金を出してでも欲しがっている専門性・付加価値の高い人の募集がある。一方、ハローワーク(職安)は求人も求職も無料だからお金を出してでも採用したいという求人はそんなには来ない。地方はハローワークを見ればその地方の求人状況がわかる。
 もし自分に、募集されている専門性が無い場合は、(ハローワークで)職業カウンセリングを受けてどうすればその職につけるのか坑道計画を立ててくれる。ただ、鵜呑みにしてはいけない。民間・公的職業訓練機関のコースは卒業後の就職状況がばらばらで、自分で調べておかねばならない。きちっと調べて就職率の高いコースを受けるようにすること。在職者も同じ。いつ解雇されるか会社が倒産するかわからない。
 今はちょっと異例な状況だ。次の景気が回復したときに備えるべきだ。太陽光パネル、電気自動車が注目されて、産業構造ががらっと変わる可能性がある。技術革新、将来の変化に個々人がどういう対応をしたらいいのか調べて行動するのがいい。
 
労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる)

伊藤実の著作 in Amazon.co.jp

編者感想
ハローワークで職業カウンセリングや職業訓練相談をやってる。教育訓練のコースは電気工事士・簿記などの昔からある物のほかに、少ないけれどもWEBプログラミングやWEBデザインなどのIT系もある。ただ、太陽光発電や電気自動車、環境関連のコースはまったく無い。がらっと変わった時を考えての職業訓練は用意されていない。また30歳以下の人を対象にしたコースが結構多い。えり好みしてもいられないんだろうけど、将来のことを考えて自分にあった職業訓練を探すとなるとなかなかピッタリというのはない。

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伊藤実 不況に強い中小企業 2009/06/18

 元気な中小企業の特徴は
  1. 安定成長志向。過大な設備投資、会社を大きくしようというところとは違う。
  2. 製品に独自の競争力を持っている。そのためには研究開発に熱心。短期で結果を求めない。自由に試行錯誤させている。
  3. 大都会は別だが、地域に根ざして人材育成に熱心。人を大事にする。正社員中心に、過度な成果主義を採らない。柔軟な労働管理。ワークライフバランスを考えている。
  4. 経営者が立派な人格者。大きな意味で社会貢献を考えている。コストカットに走らない。
 
地域に特定の大企業、その系列企業しかないところは、たいていそういう大企業は輸出企業だから、輸出が振るわなくなると工場をたたんで撤退してしまう。また大きな工場は組み立て工程なので、全国から地元の人でない派遣労働者を使っている。  
元気のあるところは大企業もあるけど、中小企業も集積している。統計で見ると、地方で一番従業員を抱えているのは食品加工業、つぎに一般機械。そういった中小企業が地方(の雇用・元気)を支えている。企業誘致をする自治体の人はその辺も考えてみるといい。

労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる)

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編者感想
特に目新しい話ではなかった。ちょっとねた切れか。そんなときに話し手の馴染んだテーマで数字を羅列して話されても退屈なので、「元気な中小企業」の復習をさせてもらった、と考えることにしよう。

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伊藤実 農業と雇用 2009/05/21

 最近農業講座を受講している。農水省から補助が出ているので年間5回で1000円、講義と畑作業の実習、科学的に専門家が教えてくれる。やってみるといろんなことが分かる。
 植え付けと収穫時に忙しい。頃作りには年間8時間働くとして大体37日でできる。機械化が進んでいるので週末農業・兼業農家でもやっていける。
 いま農業の大規模化がいわれているが、半分は正しくない。大半の小規模農家が政策から落ちてしまう。大規模化は(効率的で)良い。
 群馬県の昭和村では火山灰地を畑にして大規模化してレタスを作っている。ものすごくお金をかけて作っている。収入も多い。一方隣の川場村は零細農家が道の駅で野菜を売っている。年間67万人やってくる。小規模な村だとこれで(売り上げが上がり)屋っていける。
 日本の農業は両方が(発展するような)政策でなくてはならない。農業の問題はどうやって作るかではなく、どうやって売るか。マーケティングの問題だ。昔は生産物を農協が買ってくれたが、今は「地産地商」(地元の人が作って地元の人が売る:地産地消をもじって)生産者がどうやって売るかも考える。
 雇用の問題で農業が注目されているが、農業雇用者は年収が低くすぎてうまくいかない。農業に従事して経営者になるようなシステムを作らなくてはならない。それの障害になっているのは農地法や農業委員会。新規参入を規制している。まずこれを改革しないといけない。

労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる)

編者感想
農地法や農業委員会の改革はぜひ必要だ。国土の偏りない発展のためには田舎に若者が参入できるような仕組みがいる。村の顔役たちの既得権(いまはそんなにおいしいものではなくなったが)を守るためのものではなく、国土保全と食糧自給のために改革が必要だ。良い政策を立てれば雇用問題を解決する一助にもなりえる。政治家・官僚の皆さんは農業の現場を見て良いプランを考えてほしい。

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伊藤実(いとう・みのる):人材育成とOJT(On the Job Training): 2008/10/9

要約:今の若い人は仕事がパターン化している。ある程度パターン化したものをITで大量に習得している。今では成果主義で短期的な成果のみを追い求め、OJTははぶかれてしまっている。このままだと中・長期的には組織の力は弱まっていくだろう。

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伊藤実(いとう・みのる):経営戦略 2008/9/11

要約:経営戦略をしっかり立てることが重要だ。目先のことでなく自分達の会社・自治体・国を将来どのようにするのかというグランドデザインがうまくいった例を中小企業と地方自治体であげてみた。

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伊藤実(いとう・みのる):労働者派遣法を考える 2008/6/19

派遣労働者はどういう位置付けで考えればいいかここから糸口に伺っていきたいと思います。(山下アナウンサー)

最近何かと派遣労働者・派遣社員が社会的に問題になっている。そもそも「派遣」というのはどういう働き方だったのか、それが今どう変ってきたのか考えてみる。

パート・アルバイトは働いている企業に直接雇用される。ところが、「派遣」というのは直接雇用されるのは他の会社で、その会社から実際に働く会社にそれこそ「派遣」されてくる働き方。間接雇用といわれている。
人手不足が深刻になった1980年代にそういう働き方をする人が増えた。当時、請負という働き方は法律で認められていたが、派遣という働き方は認められていなかった。
    1986年に「労働者派遣法」を作り、13業務に限定していた。それらの業種は2種類あつて、
  • 同じ企業に入って長期雇用で経験を重ねて技術技能を伸ばす、という働き方で無いもの。専門的な職業あり、同時通訳とか。
  • 特段、長期雇用で一所懸命いろんなことを学ぶという種類ではない仕事。駐車場の管理人とか。

しかし、当時派遣で働いていたのは多くが若い女性で、一般事務の仕事だった。(この仕事は上の2種類の業種には当てはまらないので、それに加えて)「ファイリング」という仕事を加えて「労働者派遣法」の13業務とした。

その後、バブルがはじけて不況になり、雇用を増やす目的で次々と規制緩和をしていった。派遣法も16業務に増えていった。1999年には(最後には)警察・医療を除いて原則自由となった。さらに、生産現場にも派遣を認めた。

その結果、この間に正社員が減り、非正社員が非常に増えた。ただ、パートタイマー・アルバイトは増えていない。増えたのは派遣労働者とか契約社員。
パートタイマーと派遣社員で大きく違う点がある。パートタイマーは主婦の人が多いので(自分の意志で)正社員にはなりたくないと思っている。一方、派遣で働く方の中には本来正社員で働きたかったのに働けなかったということで、もともと正社員になりたい人が派遣社員として働くことになっている。本来の「労働者派遣法」が目指していたのとは違う社会状況になってしまった。

規制緩和したのでどんどん派遣業者が新規参入してきたので、中には違法行為をする業者も出てきた。それから派遣労働者を受け入れている会社でも「偽装請負」にして業務停止処分された企業もある(請負労働者とした場合には労働基準法が適用されず、派遣先企業側が請負注文者の立場を取って自由に契約解除してしまうなどの「メリット」がある)。

今は規制を緩和しすぎて大混乱になってしまっているという状況だ。

働く人は商品とは違う。人が働くことに対して(今の混乱した状況を)整理する必要がある。どう考えてもほとんどの職種で日雇い派遣が可能というのは変だ。
    派遣にも二種類あって
  1. 登録型(一般労働者派遣):派遣会社に登録して仕事のあるときだけ働く。特に日雇い派遣で一日ごとに仕事があったり無かったりする場合は大いに問題あり。
  2. 常用雇用型(特定労働者派遣):派遣会社に常用雇用として雇われている。技術者が多い。これはほとんど問題がない。
  3. (伊藤氏は言及していないが「紹介予定派遣」というのもある。これは派遣先企業での一定期間派遣社員として勤務した後に派遣先企業と派遣社員が合意すれば、派遣先企業で正社員・パートなどとして直接雇用される)

派遣という働き方は、派遣する会社とそれを受け入れる会社がある。力関係は受け入れ先の会社が強いので、受け入れ先(派遣先)の企業でやるべきことを派遣する会社に押し付けていることも多い。

派遣先企業も便利だからという理由で片っ端から派遣労働者を使うという考え方は修正する必要がある。


2008年 6月 19日 木曜日 労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる):労働者派遣法を考える


編者感想: 派遣労働には働く人はもちろん、派遣元・派遣先の企業にも金銭を除くとなにもメリットが無い労働形式だと思う。(失業中の私が言うのもなんだが)どんな労働であれ労働対価の多少・有無にかかわらず働くことはその人の生きることであり、時が経てば人生ということになる。また派遣元・派遣先の企業にとってはその場しのぎの癖がついて、人(社員)を育てるという意識が抜け落ちてしまう。多くの経営者が「企業は人だ」と言っているが、組織に人を育てる機能が無いと自己増殖できないことも分かっているのだろうか。必要なら直接雇用すればいい。そのコストは後になって必ずプラスになって返ってくると思う。
 「ショートワークス」などとカタカナ言葉で日雇い労働派遣を謳う企業もあるが、江戸時代の人足寄せ場と同じではないの?昔の人足寄せ場の悪い親方は日雇いなのに日払いせず月払いにして高利貸しの資金にしてたりするけど、今の派遣企業はきちんと日払いしているのだろうか?
 また、日本経団連会長の御手洗冨士夫氏は偽装派遣の問題について「請負労働者に技術指導できないのが制約になっている」、「偽装請負のおかげで産業の空洞化が抑止できている」といった主張をして日本経団連会長の権威と見識を大いに下げてくれた。キャノンはいい会社と思うけど、二代目社長で老害の出ている経営者の実例だ。そういう経営者が、今日の派遣労働者・派遣社員の問題を社会的に拡大した一因だとおもう。

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伊藤実(いとう・みのる):後期高齢者医療制度 2008/5/22

前回もこの話題を取り上げたが、それ以後も混乱している。
その原因はいくつかある。

政治の場でのやり取りが、まるでテレビのワイドショーのようになっている。本質論には触れず印象的なことを論じている。「姥捨て山」とか、当事者の人が聞いたらドキッとするようなことを言っている。その結果、選挙をすると、高齢者の人口は多いし投票率も高いのでいままでの予想とは異なる選挙結果が出る。ますます「ワイドショー」の威力が高まっている。
年金についても本質的な議論をせずワイドショーみたいなことをやっている。これではヨーロッパ諸国のような本質的かつ大胆なな改革は出来ない。

行政も、かなり本質的な改革をしたにもかかわらず、揚げ足取りをされるようなことをしょっちゅうやっている。「医療保険料が下がると言っているのに、上がるじゃないか」ととい人が結構出ている。個別にきめ細かな説明を市町村の窓口でやるべきなのにやっていなかった。
そもそもネーミングが無神経すぎる。「高齢者」の「後期」なんてつけるから「姥捨て山」、「長生きするなと言っているのか」と上げ足をとられる。そしたらあわてて「後期」を「長寿」と言い換えたりする。
また、ある市町村でやったことだが、通知の封書に黒い枠を付けていて、受取った人の気分を害した。

一方、この制度に腹を立てている高齢者が制度を理解しているかというとほとんどの人は内容を分からないで怒っている。

社会保障というのは世代間の助け合いが大原則。ところがいままでの制度でやってみたらうまくいかない。
通常(サラリーマンとして)働いているときには健康保険組合などの職域保険に入る。定年後は国民健康保険(などの地域保険)に入る。すると高齢化に伴い国民健康保険は高齢者が増えてきた。それに対して健康保険組合から財政支援したら、8割くらいの健康保険組合が赤字になってしまった。
そんなわけで、医療費を沢山使うのは高齢者の方々だから、いろんな組織が支えようと言うことになった。それで今の制度に移った。1割が高齢者、5割が国(税金)、4割が健康保険組合で負担しようとなった。高齢者の負担が大きいわけではない。

引退した高齢者の中には基礎年金しかもらっていない人もいる。こういう人に保険料を払えと言うのはむり。所得、資産のある人は上乗せして払い、基礎年金でやっと生活している人には軽減するなり免除するといった細かな対応が必要だった。国はいまそれを検討している。最初からやっていれば大混乱にならない。

財源はヨーロッパ諸国を見れば分かるように消費税になる。ヨーロッパの消費税は20%前後。しかし良く見ると食料品は定率にするなどの配慮をしている。その配慮が大切。


2008年 5月 22日 木曜日 労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる):後期高齢者医療制度


編者感想:行政はサービス業なんだから国民という客に配慮した仕事をしなければそっぽを向かれる。制度を作り上げるキャリア官僚から役所の窓口担当者まで、国民・住民を幸せにしようと思って働いて欲しい。

以前から思っているんだけど、「消費税」と言う名前はいいかげんに「売上税」に直すべきじゃないか?英訳したら Sales Tax なんだから。消費税と言う名前を聞くたびに誤魔化されている気分になる。

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伊藤実(いとう・みのる):後期高齢者医療制度 2008/4/24

新制度を実施するときの準備が不十分で混乱が見られる。
日本の社会制度はいろんな修正を加えるので非常に複雑になってしまう。だから相当時間を掛けて説明しなければならなかったが、それが不十分だった。
保険証が届いてないとかの行政ミスも重なった。
感情的に納得できないのは、保険料を年金から天引きされること。

少子高齢化社会が進んでいる。深い社会の変化がある。どうやって医療費を負担するのかという点も含めて今回の制度改正がある。
国民一人当たりどれだけ医療費を使っているか。年齢によって差が大きい。年間に64歳以下は15万9200円、65歳以上は65万5700円。どうやって負担するか。

混乱しているときに、行政側から「制度改正に伴って医療費の負担は下がるんだ」という説明がなされている。確かに低所得者層の負担は下がるように設定されている。ただ、(全ての所得層の)全員が下がるのかというと、そうではない。所得の高い人は増える。

今まで国民健康保険は市町村が運営していた。(地域が狭いと高齢化などで)ばらつきが出てくるのでもう少し広くしようということで都道府県単位で運営する広域連合に移管した。一方、都道府県単位では福祉政策をやっていた(シルバーパス、条件を満たした場合の医療費免除など)。そういう政策は全国一律ではなく都道府県単位で行なわれていた。この政策ががはずされた。

また、今まで息子・娘の扶養家族になってい(て医療保険料を払っていなかっ)た方が、突然保険料を負担することになった。自民党が前の選挙で負けたので医療保険料支払いの猶予措置を設けた。これでまた複雑になって行政ミスの背景になった。

保険料が下がるといわれているのに上がって驚いている人もいる。それはおそらく都道府県単位で優遇措置を講じていたのがなくなったから。ではなぜなくなったのかというと、これは後期高齢者医療制度とは異なって、地方自治体の財政問題による。地方自治体が財政破綻するのを未然に防ぐため、地方財政健全化法が作られ、この2008年度から実施されるため。この法律で地方自治体が赤字隠しが出来ないようになった。例えば、地方自治体が温泉会館を建てて第三セクターで運営して、そこの赤字を表に出ないようにしていたとか、そういうのをごまかせないようにした法律。いままで住民のために良かれと思ってやってきた政策も、地方自治体の財政が苦しくなるとそういう(福祉)政策を止めたり縮小したりし始めている。この負担増は今回の医療制度改革とは別のところから来ている。それが今全国あちこちで起こっていて、「こんどの医療制度改革はけしからん」という混乱が生じている。

少子高齢化にもとなうより大きな問題は年金制度で、誰が負担するのか支援するのか。

あまりふれられないが、今回の医療保険制度の改正に伴って、現役世代からかなりの財政支援をしている。大企業を中心に組織されている健康保険組合から相当な財政支援している。

地方自治体全ての借金を合計すると200兆円くらい。さらに国も800兆円くらいある。あわせて1000兆円くらいの借金がある。この状態で今の世代がただで公共サービスを受けてその付けをあとの若い世代にみんな押し付けるのか、という問題もある。単なる制度のごたごた(今回の混乱のこと)よりも、日本全体(の福祉・医療制度)をどうデザインするのかという問題が出てきたといえる。

日本は大量の国債を発行しているので、金利が1,2、3%と上がると、デフォルト(国の借金棒引き)の最悪の事態もありうる。いま日本は根拠の無い楽観主義に覆われている。「ゆで蛙」にたとえられる。知らない間に温度が上がって(すぐに対応せずに問題から目をそらし)茹で上がってしまう。

本当は、木(後期高齢者医療制度)を見てわあわあ騒ぐのではなく、森(少子高齢化していく中での財政赤字)を見て日本全体の将来のデザインを考えるべき重要な岐路に来ている。


2008年 4月 24日 木曜日 労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる):後期高齢者医療制度


編者感想:今回の医療制度改革はなるほどある程度工夫されているとは思う。この混乱を報道した番組で、ある官僚が「二年前から準備してやってきたのに、何で今になって騒ぎ出すんだ」とぼやいていた。そんなこといったって、日本の指導者層は最終受益者(負担者)に十分な説明をしない伝統があり、また報道メディアもお上の情報垂れ流しと国民の感情を煽り立てるような番組作りをするから大騒ぎになっている。日本国民は日本全体のデザインを考えるのは苦手なんだろうけど、なんとかしないとね。

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伊藤実(いとう・みのる):地域再生 2008/3/20

この仕事を受けたとき正直「ラジオかぁ」と思った。TVは良く出演するのだけれど。
しかし、(今では)地方に仕事に行くと地方自治体、企業の方に「ビジネス展望の伊藤さんですか」と聞かれて、その後の話が進みやすい。

道路特定財源をどうするか議論が盛んだが、地方に財源を移しても地方は再生するかというと必ずしもそうでは無い。

いままで日本の行政は中央から地方に(悪い言葉だが)予算をばら撒いていた。
昔、「地域総合整備事業債」と言うのがあった。地方自治体がハコモノを作るときに総事業費の75%までこの事業債でまかなえた。
また、地方自治体が借金をするとその利子の最大55%まで地方交付税で補填されていた。→それで需要予測を誤ったハコモノを一杯作っていた。

このように過去にお金を地方にまわしていたが、うまくいかなかった(破綻地方自治体、夕張市など)。

元自民党の梶山静六氏が本に「地方は自ら考え、自ら行なうという習慣に欠けていた」と書いている。
地方のインフラ整備と称して新幹線や高速道路を作ってもその地方が発展するとは限らない。地方支店などの廃止、観光地の素通り・日帰り化。

岩手県北上市の例。便利なところではないが、水、学校、生活インフラはある。市が開発公社をつくる。市長ほか職員が年間200社を訪問して企業誘致している。地道な努力で企業誘致に成功。
群馬県川場村の例。道の駅をつくり、地元産品の直売とインターネットで販売。道の駅に年間67万人訪れる。

アイデアが大切、地元から出なかったらよそから持ってきてもいい。ハコモノはダメ。


編者感想:地方のある役場に行く機会があってそのときの対応を思い出してみると、「自ら考え、自ら行なう」ような公務員は目にしなかった。地域再生は財源じゃない、人だ。

2008年 3月 20日 木曜日  労働政策研究研修機構統括研究員 伊藤実(いとう・みのる)

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