霧島和孝(きりしま・かずたか):アメリカ・サブプライムローン問題と日本経済への影響  2008/4/8

Home > 2008-04 / 霧島和孝 > This Entry [com : 0][Tb : 0] Page Top↑

2008-04-08

先週、日銀短観(全国企業短期経済観測調査)が発表され、企業の業況判断が大きく悪化した。
要因はサププライムローン問題だろう。これによりアメリカ経済は大きく減速するので、アメリカ向けの輸出が減少し始めている。
間接的な影響として、円高・石油をはじめとした原材料高が起こっている。アメリカから資金が逃げて円高、原材料などの商品市場に流れて原材料高になっている。

3月末にアメリカの証券会社ゴールドマン・サックス社から、世界の金融機関が抱えているサブプライムローンの損失総額が1兆2000億ドル(120兆円)になる可能性があると発表された。
少し前にIMFが同じような試算をしたが、そのときには78兆円だった。わずか1,2週間で40兆円くらい増えた。4ヶ月前にはOECDの発表した数字は38兆円だった。

先週末に日米で株価の上昇が見られた。この原因は、証券会社のリーマンブラザーズが資本増強を大きくした(30億ドルから40億ドルへ引き上げた)ことと、最も大きな損失を出したといわれているスイスの金融大手UBSが150億スイスフラン(1兆5,000億円)の資本増強を行なうと発表した。これで金融機関が立ち直るのではないかという観測も出ている。これによりNYダウ、日経平均ともに上げていて現在もその流れを引き継いでいる。

先行きの予測としては、『真理は中間にあり』ということで考えてみる。
悪い数値は、
3月のアメリカ雇用統計の発表:2月に比べて8万人減少した。三ヶ月連続の減少。非常に大きなマイナス。 
3月の失業率:前月に比べて0.3%悪化した。現在5.1%。これもまた大きなマイナス。
不思議なことに、これだけアメリカの実態経済に減速観が見えてきたのに株価は下がらない。一体どっちなんだろう?

日本のバブル崩壊の時のように長期化はしないだろう。アメリカ経済は一年くらいは調整するかもしれない。
その理由は、アメリカの金融機関が積極的に情報を開示していること。損失を表に出している。日本は(バブル崩壊のとき)ひた隠しにした。隠し切れなくなってはじめて損失額を明らかにしていた。
アメリカは会計の制度が年々厳しくなっていて、昨年11月にも変更している。少しでも損失が見込まれるものは早く開示をするようになってきている。
それと、アメリカの政策当局の対応が早いこと。ベアストーンズ破綻の対応も早かった。
情報開示」と「政策対応の早さ」で大きな危機には陥らないだろうと思う。

日本経済への影響は悲観的になることもないだろうが、油断もしてはいけないだろう。


(山下アンカー)ビジネス展望は先週の一週間の放送を月曜日の朝から番組のホームページで聞くことができるようになっています。

2008年 4月 8日 火曜日 城西大学現代政策学部教授 霧島和孝(きりしま・かずたか):アメリカ・サブプライムローン問題と日本経済への影響


編者感想:なるほど、経済指標は悪いのに株価が下がらないのはアメリカの企業が損失の開示をちゃんとやっているからなのか。日本の企業経営者もきちんと損失を開示して欲しい、株価が上がるんだから経営者は正直に発表しなきゃ。それと、政策対応が早いのでサブプライムローン問題は長引かないと予想するわけか。確かに、この問題がクローズアップされ始めたとき、アメリカの経済政策担当者たちは日本のバブル崩壊の事例を詳しく研究している、といったニュースを聴いたことがあった。一方では財務省の息のかかった人物を日銀に送り込んで(財政赤字対応を最優先する)政府の意のままにしようとする政治家がいる日本。失敗に学んでいるアメリカと、失敗を繰り返す日本と、面白い経済ドラマが展開している。

霧島和孝さんプロフィール→ http://biz.sbrain.co.jp/keyperson/K-5026.htm

Comment

Post a Comment









管理者にだけ表示を許可

Trackback

http://business10.blog96.fc2.com/tb.php/30-4cb53179

「ビジネス展望」メモ | Page Top▲

New >>
十市勉(といち・つとむ):日本の長期エネルギー需給の見通しについて 2008/4/9
<< old
高木勝(たかぎ・まさる):景気について 2008/4/7